近年、新しい車の乗り方として注目を集めている「カーリース」。月々定額で憧れの車に乗れる手軽さから、興味を持つ方も多いのではないでしょうか。しかし、その一方で「カーリースはデメリットだらけ」「結局損をする」といった声も耳にすることがあります。
「月々1万円で最新の車に乗れる!」
そんな魅力的な広告を見て、まるで魔法のような仕組みだと想像してしまう方もいるかもしれません。しかし、残念ながら現実はそう甘くありません。あたかも「お得」であるかのように喧伝されるカーリースですが、その仕組みを深く理解しないまま契約してしまうと、後悔してしまう可能性も十分にあります。
「カーリースは騙しだ!」
そういった強烈な印象を持つ方もいるかもしれません。なぜ、そのような意見が出るのでしょうか?それは、カーリースの仕組みや特徴が、一部の消費者の期待や認識と大きく異なるためです。
結論から申し上げましょう。カーリースは決して「お得」な乗り方ではありません。しかし、だからといって全面的に「損」であるとも言い切れません。重要なのは、カーリースがどのような仕組みであり、どのようなデメリットを抱えているのかを正しく理解し、自身のライフスタイルや車の使い方に合っているかどうかを見極めることです。
この記事では、長年クルマ業界に身を置いてきた専門家の視点から、カーリースが「デメリットだらけ」と言われる理由を徹底的に解説します。その上で、カーリースを賢く選択するための考え方や注意点についても深く掘り下げていきましょう。
1.「月々1万円」のカラクリ – 魅力的な広告の裏側
カーリースの広告でよく見かける「月々〇〇円」という謳い文句。これは、車両本体価格から数年後の予想される価値(残価)を差し引き、さらに各種税金や保険料などを均等に分割した金額を指しています。一見すると非常に安価に感じられ、「これなら気軽に新車に乗れる!」と魅力を感じる方もいるでしょう。
しかし、この「月々〇〇円」という金額だけを見て、安易に契約してしまうのは非常に危険です。なぜなら、この金額には車両本体価格の全額が含まれているわけではなく、あくまで契約期間中の「利用料」に過ぎないからです。
さらに、広告に記載されている金額は、最も安いグレードの車両であったり、ボーナス払いが前提となっていたりするケースも少なくありません。実際に自分が乗りたい車種やオプションを選択すると、月々の支払額は大幅に上昇することがあります。
あたかも「格安で新車に乗れる」かのような印象を与える広告は、カーリースの本質を理解する上で大きな障壁となります。魔法のような仕組みなど存在せず、そこには明確なカラクリがあることを認識する必要があります。
2.なぜ「騙された」と感じるのか? – 消費者との認識のギャップ
カーリース契約後に「騙された」と感じる人がいるのは、カーリースの仕組みと消費者の期待との間に大きなギャップが存在するためです。
多くの消費者は、クルマを購入するように「自分のものになる」という感覚でカーリースを捉えがちです。しかし、カーリースの本質は「一定期間、車を借りる」という賃貸契約に近いものです。契約満了時には車を返却する必要があり、走行距離制限や原状回復義務など、様々な制約が存在します。
また、総支払額が見えにくいという点も、「騙された」と感じる要因の一つです。月々の支払額は安く抑えられているように見えても、数年間の契約期間を通して支払う金額を合計すると、車両本体価格を大きく上回るケースも少なくありません。これは、カーリースには金利相当額や手数料が含まれているためです。
さらに、「所有」という概念への強いこだわりを持つ方にとって、契約満了後に車が自分のものにならないという点は、大きな不満につながります。「結局、高いお金を払って借りただけだったのか…」と感じてしまうのも無理はありません。
3.カーリースは決して「お得」ではない – 支払い方法の一つとして捉える
改めて強調しておきたいのは、カーリースは決して「お得」な車の乗り方ではないということです。それは、カーリースが車の「購入」ではなく、あくまで「利用」という形態であるからです。
ローンと同じように、カーリースにも金利相当額が含まれています。各種税金や保険料がコミコミになっている点はメリットと言えますが、それらが月々の支払いに含まれている分、個別に支払うよりも割高になっている可能性も否定できません。
重要なのは、「お得かどうか」という二元論でカーリースを捉えるのではなく、「数ある車の乗り方の一つ」として理解することです。カーリースは、初期費用を抑え、月々の支払いを一定にしたいというニーズに応えるための「支払い方法」の選択肢の一つなのです。
自身のライフスタイルや車の使い方、そして経済状況を総合的に考慮し、カーリースが自分にとって本当にメリットのある選択肢なのかどうかを見極める必要があります。
4.カーリースの仕組み – 月々支払いが安くなるカラクリを解説
では、なぜカーリースは月々の支払いを安く抑えることができるのでしょうか?そのカラクリは、主に以下の2つの要素にあります。
1.残価設定
カーリースの最大の特徴であり、月々の支払いを抑えるための重要な仕組みが「残価設定」です。これは、契約満了時の車の予想される価値(残価)をあらかじめ設定し、車両本体価格からその残価を差し引いた金額をリース期間で分割して支払うというものです。
例えば、300万円の新車を3年契約でリースする場合、3年後の残価が200万円と設定されていれば、実際に月々の支払いの対象となるのは、300万円 – 200万円 = 100万円の部分だけになります。これを36ヶ月で割るため、月々の支払いは大幅に抑えられます。
しかし、この残価設定には注意が必要です。契約満了時に、車の状態が設定された残価を下回っていた場合(走行距離超過、傷や凹みなど)、追加料金を請求される可能性があります。
2.諸費用コミコミ
カーリースの月々の料金には、車両本体価格だけでなく、自動車税、重量税、自賠責保険料などの税金や保険料が含まれている場合が多くあります。これにより、車検の時期や自動車税の納付時期にまとまったお金を用意する必要がなくなり、月々の支払いを一定にすることができます。
ただし、これらの費用がコミコミになっている分、個別に支払うよりも割高になっている可能性も考慮する必要があります。
5.【徹底解説】カーリースのデメリット7選 – 契約前に必ず知っておくべき落とし穴
ここからは、カーリース契約前に必ず理解しておきたい、具体的なデメリットを7つ解説していきます。
デメリット1:金利相当額が総支払額に上乗せされる
ローンと同様に、カーリースにも金利相当額(リース料率)が含まれています。リース会社は、車両の購入費用や維持管理費用、そして利益を上乗せしてリース料金を設定するため、金利が同じであれば、最終的な総支払額は現金一括購入やローン購入と比べて高くなるのが一般的です。
月々の支払いが安く見えるのは、あくまで支払いの期間が分割されているためであり、総支払額で見ると決して「お得」とは言えません。
デメリット2:走行距離制限がある
ほとんどのカーリース契約には、月間または年間の走行距離制限が設けられています。これは、契約満了時の車両の価値(残価)を維持するために設定されているものです。
この走行距離を超過した場合、1kmあたり数円~数十円の追加料金が発生します。日常的に長距離を運転する方や、休日に遠出する機会が多い方にとっては、この走行距離制限が大きなデメリットとなる可能性があります。
デメリット3:中途解約が原則不可、または高額な違約金が発生する
カーリース契約は、原則として契約期間中の解約ができません。もし、やむを得ない理由で中途解約する場合、残りの期間のリース料に加えて、高額な違約金を支払う必要が生じることがあります。
ライフスタイルの変化(転勤、家族構成の変化など)によって車が不要になった場合でも、簡単に解約できないという点は、カーリースの大きなデメリットと言えるでしょう。
デメリット4:契約満了時に車両の返却が必要
カーリースは「借りる」という契約形態であるため、契約満了時には車をリース会社に返却する必要があります。ローンで購入した車のように、自分の資産にはなりません。
長年乗り慣れた車に愛着があり、長く乗り続けたいと考えている方にとっては、数年ごとに新しい車に乗り換えるというカーリースの仕組みは、必ずしもメリットとは言えません。
ただし、リース会社によっては、契約満了時に車両を買い取ることができるオプションを用意している場合もあります。
デメリット5:カスタマイズに制限がある場合が多い
カーリース車両は、契約満了時に原状回復して返却する必要があるため、基本的に自由なカスタマイズは認められていません。
ステッカーを貼ったり、社外品のパーツを取り付けたりすると、返却時に原状回復費用を請求される可能性があります。自分好みの車に乗りたいという方にとっては、大きな制約となるでしょう。
デメリット6:事故や傷による修理費用が高額になる場合がある
リース期間中に事故を起こしたり、車に傷や凹みをつけてしまった場合、修理費用を自己負担する必要があるのはもちろんのこと、返却時には原状回復費用を請求される可能性もあります。
特に、車両保険に加入していない場合や、保険を使っても免責金額が発生する場合は、高額な修理費用を負担することになります。また、小さな傷でも、リース会社の基準によっては修理が必要と判断されることがあります。
デメリット7:総支払額が把握しにくい場合がある
月々の支払額が一定であるため、ついついその金額だけに目が行きがちですが、数年間の契約期間を通して支払う総額は、車両本体価格を大きく上回るケースも少なくありません。
また、契約内容によっては、ボーナス払いが設定されていたり、契約満了時に追加の支払いが必要になったりする場合もあります。
カーリースを検討する際には、月々の支払額だけでなく、契約期間全体の総支払額をしっかりと把握し、他の購入方法と比較検討することが重要です。
6.ローンもカーリースも支払い方法の一つ – 賢い選択のために
カーリースとローンは、どちらも車を手に入れるための「支払い方法」の一つです。それぞれの仕組みと特徴を理解し、自身の状況に合わせて最適な選択をすることが重要です。
車の購入(ローン):
- メリット: 車が自分の資産になる、走行距離制限やカスタマイズの制限がない、自由に売却できる
- デメリット: 初期費用が高額になる、維持費を自分で管理する必要がある、数年後に車検費用などのまとまった出費がある
カーリース:
- メリット: 初期費用を抑えられる、月々の支払いが一定、税金や保険料がコミコミの場合がある、常に新しい車に乗れる可能性がある
- デメリット: 車が自分の資産にならない、走行距離制限がある、中途解約が難しい、カスタマイズに制限がある、総支払額が高くなる可能性がある
どちらの支払い方法が自分に合っているかは、一概には言えません。例えば、初期費用を抑えたい、数年ごとに新しい車に乗り換えたい、維持費を定額化したいという方には、カーリースが選択肢の一つとなり得ます。
しかし、走行距離を気にせず自由に乗りたい、車を自分の資産として長く所有したい、カスタマイズを楽しみたいという方には、ローンで購入する方が適しているでしょう。
7.まとめ:デメリットを理解した上で、賢くカーリースを検討しよう
カーリースは、決して魔法の仕組みではありません。魅力的な広告の裏側には、しっかりと理解しておくべきデメリットが存在します。
「カーリースはデメリットだらけ」という意見は、一部の側面から見れば的を射ていると言えるでしょう。しかし、そのデメリットを正しく理解し、自身のライフスタイルや車の使い方と照らし合わせることで、カーリースが必ずしも「損」な選択肢とは限らないことも理解できるはずです。
重要なのは、安易な「お得」という言葉に惑わされることなく、カーリースの仕組み、メリット、そしてデメリットをしっかりと把握すること。そして、自身のニーズに最も合った車の乗り方を選択することです。
もしあなたがカーリースを検討しているのであれば、この記事で解説したデメリットをしっかりと理解した上で、複数のリース会社のプランを比較検討し、納得のいく契約を結ぶようにしてください。
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